水について(2)

水は小さい!
”水”の大きな特殊性として、その大きさがあげられます。
私は「かがく」を考えるとき、いつも大きさに着目します。物質の大きい・小さいはとても単純な情報でありながら、何らかの要因となることがとても多いのです。
化学物質の大きさの指標となる分子量と常温での物質の状態をみてみると、”水”が特異な物質であることがわかります。表には”水”とその他の物質の分子量、常温での状態をまとめました。

  水(H2O) メタン(CH4) アンモニア(NH3) 窒素(N2) 酸素(O2)
分子量 18 16 17 28 32
常温での状態 液体 気体 気体 気体 気体

 

水の分子量は18ですが、似たような分子量のメタン(分子量16)、アンモニア(分子量17)が、常温で気体なのに対し、水は液体である点がもっとも大きな違いです。一般に分子量が小さいほど常温で気体として存在しやすくなります。それを考えると、水よりも分子量の大きな窒素(分子量28)、酸素(分子量32)などの物質も常温で気体なのですから、水の異質性は際立っているといわざるを得ません。

液体、小さいことのメリットとは?
常温で液体で存在する物質は、気体で存在する物質に比べて扱いやすくなります。例えば物質を運ぶシーンを考えても、種々のガス(水素ガス、酸素ガス、プロパンガスなど)などの気体はボンベに封入して扱わなければたちまち拡散してどこかへいってしまいますが、水ならバケツ等で良いのですから。

また、海、川、池、(もっと言えば水たまり)などのように液体は自然に集まって存在するので、生物が”水”を得ることは液体だからこそ簡単なのです。
また、分子が小さいという特徴は水分子が小さなすきまをすり抜けることができる性質をもたらしています。私たちヒトもふくめ生物の体内にはいろいろな膜がありますが、”水”は小さい分子であるおかげで、膜にある小さな孔(あな)をとおり抜けることができます。具体的には、細胞の中にまで浸透することができるのです。
水が生命の維持に役立つ為には、簡単に摂取でき、体のすみずみまでいきわたらなければなりません。水の小さいながらも液体で存在できる性質は生命維持に役立つために極めて重要な性質の一つだと考えられます。
さらに、別の機会で詳しく記しますが、水は加水分解反応という化学反応に関わります。加水分解反応は食べ物の消化や代謝など多くの化学現象に関わります。この化学反応では1つの化学物質を加水分解するのに少なくとも1つの水分子という割合で必要となります。もし加水分解反応の相手物質が1molなら少なくとも1molの水が必要となるわけです。水の分子量は18ですから1molの水は18gで済みますが、仮に水分子が大きかったとしたら加水分解反応には多量の水が必要となってしまいます。つまり少量で化学反応に関与できる特徴も水分子の小ささがもたらす特徴なのです。

さて、ここまでで1つ大きな疑問がありますよね。そうです。極めて根本的な疑問ですが、なぜ水は小さい分子なのに液体で存在できるのでしょうか。水について(3)ではこの要因から考えていきます。