水について(1)

”水”という化学物質
”水”は私たちにとって最も身近な化学物質の一つです。”水”の用途として誰もがはじめに思いつくのは、生命の維持に欠かせないモノということでしょう。『水は生命の源』とも言われます。飲料、食物などから常に私たち生物は水を摂取しているのです。その他にも”水”は、洗浄、冷却、水力発電などのエネルギー源、さらには噴水などの鑑賞…など多くの場面で利用されています。これらはすべて”水”の「かがく」的な特徴を利用したものと考えられます。
これだけの化学物質でありながら、”水”の「かがく」的な性質はあまり語られていないように感じます。中学や高校の授業でも、それほど詳しく”水”については学習しませんしね。そこでこのシリーズでは”水”をテーマに「かがく」を語ってみます。

水は循環する!
“水”がどれほど身近なのかといえば、姿かたちをかえながら常にグルグルと私たちの周りを循環し続けているにもかかわらず、”水”のかがくについて理論的に考えることを忘れるほどに身近な存在です。ただ、存在していること自体も考えれば考えるほどに不思議な物質なのです。
“水”がどのように循環しているかをみてみると、液体の”水”は私たちの体のおよそ60%を占めるように常に身近にあるのは当然なのですが、雨となってふり、川、池、海などをつくり、地面を削って地形を形成することもあり地球そのものを形成しているともいえます。個体となった氷が大陸を形成することもあるし、気体の水蒸気は地球上のあらゆる場所に存在しています。こうしてみると、”水”はかたちを変えながら私たちヒトだけでなく、あらゆる生命体のまわりを循環していることがわかります。こうしてみると、常に私たちの身近に存在できるためには、液体の”水”だけではなく、いわゆる物質の三態(個体、液体、気体)で存在できているということが重要のようです。私たち生命体が生存できる条件の下で三態で存在できるということが”水”の大きな特徴の1つといえます。

水は特殊!?
ではなぜ”水”は三態で存在できるのでしょう?それを考える前に、”水”には他にどのような特徴があるのかをみてみます。
それにしても先程みたとおり、水の活用シーンは本当に多いですよね。単一物質でこれほど多くの用途がある物質は水をおいて他に思い当りません。他に類をみないということは言い換えれば、”水”という物質には他の物質に比べてとても珍しい特徴があるともとらえられます。常に身近にある水ですから、水が珍しいといわれてもピンとこないかもしれませんが、他の物質と比べて水だけが特殊なのです。”水”が三態で存在できる理由も”水”が特殊だからなのです。
“水”を化学式で書くとH₂Oと、とてもシンプルな構造をしています。ちなみに化学構造は下図のようになります。

・・・何とも単純な構造ですね。こんなにシンプルな構造をしていて本当に特別な性質があるのでしょうか。いやいや、この構造中にもちゃんと性質のヒントが隠れています。次回からは様々な”水”の特殊性をみていきます。